ただ真夜中が流れ落ちていくだけの/ホロウ・シカエルボク
 
っ、と俺は思考の渦を逃れる、俺がそれを俺の血液だと間違いなく認識していた理由…シャワーから溢れ出してくる不規則なそれは、間違いなく俺の肉体が奏でているビートそのものだったのだ、だから俺は浴び続けることが出来た、当然のことだ…俺はひとつの奇異な現象として、俺自身の詩を吾身に浴びていたのだ、それは例えば言葉を音符に変換して、メロディーとして体感するようなそんなものだった、どうしてそんなことが起きるのだろう?気づけばそこにはいつもとなにも変わらない夜だけがあった、今夜は眠ることが出来るだろうか、と俺は考える、眠りなどまやかしだ、目覚めているこの時がそうであるのと同じように―俺の話していることなんてすべて嘘かもしれない、だけどそれがもしも記憶の奥底で芽を出したなら、まやかしとしてはそいつは極上の真実となるのだ。


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