<詩「あるなんでもない日」、「白き神の抱擁」、「婚礼」、「カフェ」「君の来る日」、「山城合戦」、「冬.../タカンタ、ゴロキ、そしてパウロ
女は葵衣の手袋をはめたかわいらしい手を
ひくと美しい笑みをうかべて後ろに滑り始めた。
あたしたちは彼女と螺旋を描くように滑り出し、少しずつ頬に冷たく爽やかな風を感じていった。
幸恵さんとあたしたちは白い毛皮の帽子をかぶっていた。背が高くほっそりとした長い手足を伸ば
して清らかに凛として銀盤に優雅な舞いを見せる彼女の氷の精霊のように繊細で煌めくような姿に導
かれて、あたしたちは新しい湖に氷塵の散る透明な軌跡を描いた。
あたしの前を黒い毛皮にくるまれて幼少期をぬけようとするころにさしかかった男の子が顔を真っ
青にして涙をため茶色の手袋を氷につけてあたしたちのとなりに座り
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)