<詩「あるなんでもない日」、「白き神の抱擁」、「婚礼」、「カフェ」「君の来る日」、「山城合戦」、「冬.../タカンタ、ゴロキ、そしてパウロ
 
子供たちの物語)」の草稿断片を散文詩として再構成したものです。

「スケート場にて」

 ある寒い日の午後、幸恵さんがあたしたちの部屋のドアを軽くたたき、それを開けると顔を見せた。
「入ってもいいかしら」「もちろん」初香が答えた。幸恵さんは優雅な足取りで入ってくるとあたし
たちに尋ねた。「気分はどう」。何も答えないで琴葉が立ち上がると彼女に抱きついた。幸恵さんは
あたしたちの顔を優しく見まわしてから言った。「提案があるの」。あたしたちは緑色の風が吹きは
じめるような予感を覚えて彼女を見た。「今度の日曜日にスケート場に行かない」。あたしたちは喜
びのあまり歓声をあげた。

 雪
[次のページ]
戻る   Point(1)