飲み込むそばから消えてゆく(たとえばあまりにも膨大な嘘が)/ホロウ・シカエルボク
 

擦り切れた中指の軋む音を聞きながら吐いた唾に溺れ込む夜だ、晩夏の中に在りながら俺の胸中は氷点下に居るように震えていた、それは根本的な魂の渇望のノイズだ、ふたつの分厚い鉄板が擦れるみたいな鈍い音がずっと続いている、それを消すために俺は、もっと激しい音を産み出さなければならない、それは魂の奥底から産まれてくるリズムだ、それを歌うための暫定的なフレーズの羅列だ、目尻が血を流すほども見開いて見つけ出すのだ、けれど視覚的なものだけに頼るのは愚劣というものだ、たった一つの感覚だけで認識出来るものは入口に過ぎない、捕らえた現象はすべての感覚によって吟味され検分されて、初めてひとつの答えとなって飲み込まれる、
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