いつだってそれは過去形で語られるものだろう/ホロウ・シカエルボク
 

ひとつだけ確かなことは
彼女はもう母親になることは出来ない

アスファルトに残った血痕を
アクリルガラスについた傷を
あのベントレーのフロントが激しく損傷していることを
誰が知るだろう
あの家の勝手口のスライド錠が壊されていて
ひとり暮らしの老婆が頭蓋骨を砕かれて死んでいることを
世界はニュースペーパーなんかじゃない
それはいつも目に届かないところで動いている

バン、バン、バン、バルコニーに座って


想像上のライフルをぶっ放す
急所に当てる銃口がないから
俺は世迷言を綴り始めた
下らない見栄と
下らない取り合いの中で
肩をすくめて
お手上げのゼス
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