ひたひたり/Seia
ひたひたりと障子の裏
板張りの縁側を歩く女の影があった
夢だということはわかっていた
ずいぶん前に引き払ってしまった
もう祖母しか住んでいなかった一軒家
広い仏間には掛け軸も
どこのものかわからない土産物も
髪が伸びるという
噂だけで苦手だった日本人形も
すべてそろっていて
過去の記憶
どれよりも現実だった
ここ数日同じ夢をみている
どこかで聞いた奇譚なら
影が近づいたり
いつか障子が開いたりするかもしれないが
そういう気配はなく
漢字ドリルのひとコマ目
うすく引かれた線をなぞるように足の裏
畳の感触を残して目覚めるのだった
特に何もすること
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