ハンドル。/待針夢子
地球儀のかたちをした白いライトが、
暗い部屋でゆっくりと回りながら光っている。
子供は寝転んで飴を舌に乗せた。
じんわりと広がる甘さが乾いた口に痛い。
子供はその痛みを舌で弄んで目を閉じた。
自分の欲望はすべて食欲に似ている。
ほしいものは何もかもいつか自分の血肉になればいいと望んでいたし、
手に入るものは必死に貪った。
なんで食欲や性欲が、充分みにくい自分の中にまで、
こんなにも確かにあるんだろう。
そんなのなければいいのにとは言わない。
ただすべての欲望にハンドルがついていて、
その方向を自分で操ることができたらいいのにと子供は思った。
あのひとの望む生き物になれるように。
飴が溶ける。
こんな夜のことなんて気付く筈無いあのひとのことを自分はこれからもずっと、
舌のうえの飴のような気持ちで見るんだろうと考えて、
子供はすこし夢を見たくなった。
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