送り盆/玉響
赤々と燃える送り火を眺めながら
今年も夏の終わりが近いことを知り
一抹の寂しさが、胸を過る
盆が過ぎれば間もなく
朝の空気が変わる
早朝 太陽が昇る前
ほんの少しだけ
軽くひんやりとした空気感
耳を澄ませば
遠くから
秋の足音が聞こえてくる
夏の終わりと
秋の始まりが交じり合う
そんな季節の狭間は
吹き渡る風の所為か
心 此処に在らず
気がつけば
茜色の空に躍る赤とんぼの群れ
ゆく夏を惜しむように
自らの命を知るように
精一杯舞う姿は美しい
死者の御霊は迷うことなく
あの世に帰ったのだろうか
もしかしたら
赤とんぼの背中に乗って帰ったのかもしれない
頭上に舞う
数多の赤とんぼを見上げながら
ふと、そんなことを思う
葉月十六日 送り盆の夕刻
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