次郎狸/北村 守通
むかし、むかぁし
ある山に与一郎という木こりが住んでいた。
さびしい森の中に家を建て、家族もなく一人で暮らしていた。
ある日のこと。与一郎が仕事を終えて山を下っていると。一匹の若い狸が道にうずくまっていた。狸は与一郎を見ると、慌てて立ち上がろうとしたが、すぐにその場にへたりこんでしまった。どうやら怪我をしているらしい。近寄って覗きこんでみると、何かの獣に襲われたのか体中が傷だらけであった。狸は弱り切ってしまっているのか、もう立ち上がる気配もなく、ただ目をうるませながら与一郎のことをじっと見上げているだけだった。不憫に思った与一郎はその狸を家に連れて帰って手当をしてやることにした。
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