塩田千春展にて/紀ノ川つかさ
まったのだ
存在の状態
体内があまりに
かき回されているものだから
血管達は這い出てきて
整ったひし形の構造物を作り
私に見せつけてきた
私の目が丸すぎたのだ
静けさの中で
あのピアノは生きていた
人が鍵盤を叩いて
鳴っていると思っていたものは
それはピアノの歌だった
そしてピアノは
焼けて死んでしまった
その時
焦げた血管をいっぱい吐いて
音楽室を黒い糸で埋め尽くした
私は思わず指さして笑った
私と同じだったから
時空の反射
死んでも守るんだ
白いドレスを着た
あの日のことを
そしてその光景の中に
幻とな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)