彼岸より/三月雨
 
私は機械の音が苦手で
沈黙の底に響き渡るあの僅かな電子音が特にだめだが
今年はエアコンを取り付けられてしまった

不定期に鳴るブーンと言う音、室外機からの続くブルブル音についでに振動
あまり落ち着かない
昨年まで付けていた扇風機の低く優しい唸りの心地よさを思い出す

とはいえ、エアコンに非はない。

私は機械の音が苦手で
ついでに言うと手先で行う細かい作業も不得手だが
裁縫をよくした。
ミシンのガガガガと続く音

あれは何故心地よいのか
聞いているうちに三枚目の巾着が出来てしまう

私は人の声も苦手で
女性の、特に感情の昂ぶった時の、
どこから出るのだと言う高い声
あれが苦手だ

何か悪い思い出でもあるのかもしれない

今頃何を思っても特になんの意味もないのだがと
冷たい床の上に転がる

明日は一体何千回目の何もできない日だろうか


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