夏/宮木理人
燃え出したアスファルトの中華鍋のカーブが
油まみれのぼくの額を照らしている
野菜炒めのように瞬時に仕上げられた身のこなしで
逃げるように潜った自動ドアのその先は市民プールだったというわけだ
全てのリアクションを後回しにしたかのように潔く
湿ったTシャツやズボンを脱ぎ捨て僕はブリーフ一枚になった
ビート板を小脇に抱えてプールサイドにビシッと気をつけをして
冷たい水のなかへダイブ
ひらがなの丸みのように
柔らかい水は
読まれることを必要としていない
だからこそ皆はそこに漂いたがる
向こうのプールサイドには、白いワンピースの女の子がこっちを見ている
だんだんと膨
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)