夏/宮木理人
 
燃え出したアスファルトの中華鍋のカーブが
油まみれのぼくの額を照らしている
野菜炒めのように瞬時に仕上げられた身のこなしで
逃げるように潜った自動ドアのその先は市民プールだったというわけだ

全てのリアクションを後回しにしたかのように潔く
湿ったTシャツやズボンを脱ぎ捨て僕はブリーフ一枚になった

ビート板を小脇に抱えてプールサイドにビシッと気をつけをして
冷たい水のなかへダイブ

ひらがなの丸みのように
柔らかい水は
読まれることを必要としていない
だからこそ皆はそこに漂いたがる

向こうのプールサイドには、白いワンピースの女の子がこっちを見ている
だんだんと膨
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