七夕の記憶/坂本瞳子
雨が嫌いなくせに
今日だけは雨が降る予感に
嫌悪感が伴わない
子供の頃から認識している
七夕には雨が降ると
いつもそうだった
織姫様と彦星様が年にたった一度
会える日だから
今日は晴れるといいですねと
口をそろえて皆が言うけれど
晴れた七夕なんて記憶になく
今宵も残念な七夕ですという
お決まりのフレーズがこの胸にも
刻まれている
どうせまた今日も雨が降る
二十歳(ハタチ)も過ぎて
月が輝き銀河が煌めく夜空を夢にみたりはしない
きっとまた今宵も雨は降る
二人が再会したところで
いがみ合って罵り合って傷つけ合う
大河に分かたれたままでいた方が
よほど幸せな二人だから
雨が降り続けることがむしろ好ましい
まだ大人になりきれない私には
掻き消すことのできない鈷(コバルト)
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