怒りの雨降らし/宮木理人
 
濡れたベニヤの板を、そいつはダン!ダン!ダン!ダン!叩いている
がっちし握力が込められた握り拳には
見るからに怒りが込められていて、
執拗に、同じ場所をダン!ダン!ダン!ダン!
おれは、怖くて顔を見ることができなかった
昨日のニュースでやっていた天気予報の通り
外では大雨が降っていて
その雨音がいくらか怒りの気配を消してくれているのがせめてもの救いだった
本人の怒りは水に流せないほど滞っていて、先から同じ場所で小刻みに震えているばかり
いつかどこかの亀裂を見つけて、そこから一気に怒りの濁流を噴出してみせそうで
こちらはじっと身を固めながら、関係のないことを思い出したりして、場を
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