鼻水が垂れても構わずにいつまでも歌っていた。/竜門勇気
がに股の女が近づいてきた
その日は二日酔いの生き残りが
頭ん中でうずくまってたからさ
あーうあーう
殴り殺してしまったんです
あいつに似てたから
二度目だったので
誰も信じちゃくれなかった
とりあえず言ってみたんです
あーうあーう
殴り殺そうと思って殴ったんです
まさか生きてるなんて
何度も抱いた体に見えたし
かつて何もかも捨てさせられた時
かけられた言葉と似たものも受けた
だからためらいもなかったし
”ねえ、後悔なんてどうでもいいよね?”
この言葉は聞こえた気がしたし
だからとにかく殴った
それがどうしたってんだ?
僕は無罪放免
がに股の女は、にゃあと泣いて
電信柱の影で跳躍した
僕が無実を訴えていた連中は
朝日にすり潰されて
微かな揺らぎになってしまった
寒さに気づいても
重ねる服なく
鼻水が垂れても構わずにいつまでも
道があるだけ歩いた
後悔なんてどうでもいいよね?
じゃあ、やっぱり僕なんてどうでも良かったってことじゃないか
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