いっそのこと/
坂本瞳子
汗ばむ項には
触れてみたくなるから
見ないでおこう
汗のしずくが湧き出でる
美しい孤の形を描くそれは
決して滴らせることなく
雨のような粒を滑らせている
その一つ一つを
薬指の腹でつぶしてみたく
なりそうだから
手はポケットにしまっておこう
変な声が出そうだから
欠伸をして誤魔化そう
舌舐めずりしたい欲望を
抑えられそうにはないけれど
口笛を吹くように唇を尖らせて
息を吹き出して
それから強く息を吸って
頬をすぼめて
倒れてしまおう
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