模倣/石村
 



イ短調ロンドの孤独に犬のやうにあくがれて
せつかく育てた硝子(がらす)色の菫(すみれ)を
ただなつかしく僕は喰ひ尽してしまつた。
失意のかたい陰影を
新緑のプロムナードにつめたく落として
僕は終日時空をよぎる少年の真似をした――
涼風吹く庭の白いテエブルで
球体に似て全てを嫌ふ
きみの形而上学を僕は聴かう。





*初期作品より(執筆時二十三歳)


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