愛しのマリ/ふじりゅう
窓の隙間から漂う 優しいそよ風に
愛しさの幻霊を流させて
だけれども 楽しさを装って鉄壁のあの人
マリには 一ミリも届かせられずに
温もりを抜いて、
楽しさ偽って、
フフッと笑った 微かなマリの声調が
眠ったフリした僕の耳に
疎外を嫌う言霊のみ乗せた
音として 聴こえてくる
ひとりきりの散歩が大好きだ
寂れた道を歩く
未だ旧式の信号機が
そこに一切の人、車、その他が無くとも
律儀に青から赤へ 交通制御の使命を全うす
懸命なあなたが好きだ
イチョウの葉降る、または重ねる、とでも言おうか
そこに、有名所のいわゆる「黄色い絨毯」と称するべき
壮大な景色を、ここでは
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