不自然な迷子に関しての思惑について/ホロウ・シカエルボク
古めかしい上着はもともとはそこそこに値の張るものだったらしいが、今ではあちこち擦り切れてしまって、ジョージ・A・ロメロ映画のエキストラが衣装のままで歩いているのかといった有様で、凍死しないでいるのが精一杯だった、次のステーションまで歩いてどのくらいなのか全く見当もつかなかったし、そこまで行けばすぐに乗れる列車があるのかどうかも皆目わからなかった、風は、この哀れなみすぼらしい人間をいっそのことここで殺してやろうと考えたみたいにますます勢いを増して、まるで氷柱が矢のように身体を貫き続けているみたいだった、それは雪のない吹雪だった、雪がないために、どこか現実離れした感覚に逃げることも出来なかった、月は出
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