旧作アーカイブ4(二〇一六年三月)/石村
みると なんだか嘘になる
それでも私は歌ふ この心 あなたに届けと
いのちのかぎりに やさしさを振り絞つて
名前も知らない
何もいはない
ただ私のそばにゐるだけ
草笛吹いて寝転んで 鳥たちの噂ばなしをきいてゐる
あなたは不思議なひと
昨日までの胸の痛みは
どこに行つたんだらう
かうしてあなたを見つめてゐると このしづかなひと時が
いつまでも続く そんな気になる
あなたは不思議なひと
名前も知らない
どこから来たのかも知らない
でもふたりでゐると なつかしい
あなたは不思議なひと
(二〇一六年三月二十五日)
海
[次のページ]
戻る 編 削 Point(21)