手花火や照らす横顔初化粧/ふじりゅう
 
夏祭りの余韻で惚けた空 雲が
ゆっくり流れ来る
おねんねしだす家々
空気を読む涼風は熱を除かず
手花火静か 照らされし君の頬を
にきびを
ちょっとみ

2車両ほどしかない田舎電鉄の呼吸
重く 深く 響く
染み渡る彼女の荒い呼吸

誘われたからって来るわけじゃなく
だけどねたかが花火ひとつ
君の二つ返事まぼろしみたい
新しいゆかたびちょびちょ
怖くてまた遠ざかった
おかしいよね よね かも
君のLINEをスクショしたこと

深呼吸の届かぬ耳
一通の便りのように
水バケツに浮かぶ青葉は
恥ずかしいほど若やか
新品の匂い 焼ける時間の
焦げ臭さと手を組
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