椅子/秋良
抗えぬ露の一粒
誰にも
触れられることのない花々
寄り添い
静けさのなかに
呼吸していた
夜明けに
来客があるのだという
貴方は
刃を握らせ
傍らに眠る友の
肉を裁ち
その身体を拓かせた
隅々までを
ひとつひとつにしていくと
友よ、
お前はどこかへと消えてしまった
客人の為の皿に
ひとつひとつを
ひとつの皿へと
変えていく
椅子と机をひとつずつ
野花もひとつ飾ろうか
ようやく
準備は出来たと
伝えたが
客人はなかなかやって来ない
花を見ていた
やがて
待ちくたびれて
椅子に腰かけると
かつての友の瞳が
皿の上から
こちらを見つめていたのだ
(ああ、
ようやっとまた会えた)
準備は出来たと
いつぞやの声がして
日射しが身体を突き刺していく
時が
巡ってきたのだ
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