夜の散歩/印あかり
【公園】
躁鬱な白熱灯が
葉桜のささやきになだめられて
たわわに実った涙を
鳥が、祈るように啄んで
焦げ落ちた空へと死んでいった
【狭い路地】
ヨモギ色のトタンの一軒家
もやしの暖かな匂い
背筋が寒くなるほど腹が減った
左足の踵だけすり減った靴
痛々しいほどにわたしは歩いている
自転車に道を譲ると
リン、と不器用なお礼が残された
【大通り】
デパートの硝子に映る私は
あなたが見ている私と同じですか
表現の枠に噛みついて血が垂れた唇
拭った手の平に青い尺取虫
あなたが大好き
それを伝えたいだけなのに
チェーン店の明かりが連なる大通り
【帰路】
何事も
答えを出さないでいよう
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