アパートメント/shell-lamb
なめらかなそれはうつくしくないのだそうです
どうしてかわたしの口の中はそれを聞くたびにざらつきを増すのでした
叔父さんの手は油をさす仕事のためか黒ずんで硬く
くっきりとしたしわが刻まれていました
この家の窓からみえる月の表面におそらく似ているのだと思います
叔父さんのあだ名はキャタピラアといいました
ラメからはぐれたひとつがひきつる足の指にはりついていたのに気付き
そこに触れると鉛筆の芯の粒が爪におちました
鉛筆を削っていると肌がどうしても一時黒くなります
そのことがわたしは今ではもう嫌ではなくなりました
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