吠える犬は繋がれるか処分されるものなのに/ホロウ・シカエルボク
 
で喚き続けている女の方に非があるのは明らかだった、余所の家の玄関チャイムにクレームなどつけ始めたらたぶん人間はもうどこにも行けなくなる―閑静な住宅地、と不動産の人間なら言うだろう穏やかな道に、狂った女の声は延々と轟いていた―手持ちのカードがカラになった人間がやることといえば、テーブルをひっくり返すかピストルを取り出すかだ、橋の上の、酷い横風を受けながら俺が考えたのはそんなことだった、見苦しい、まったく…そんな方法論に俺は死ぬまで手を付けない、なぜなら俺の懐にはたくさんのカードがあるからだ…俺は家の鍵を開ける、まるで見世物小屋の喜劇だ、テレビじゃ放送されない、悍ましい笑いもの…手を洗い、猫に餌をやる、来月には新しい時代がやってくるらしいぜ、相棒。

戻る   Point(2)