彼岸の、さくら/玉響
あの世にも
さくらはあるのかしら
彼岸の始まりの日に夢を見た
目の前には川が流れ
遠く向こう岸を眺めると
見渡す限りの桜が咲いていた
私は、はっとした
ここはさよならの岸辺
たぶん 自分は死んだのだ、と
けれども 生きていたときと同じ感覚なのだ
いったい何が違うのだろう
その時、気がついた
自分は死んだはずなのに
全く悲しくないことを
悲しくはないし
むしろ好奇心を持ってこの世界を見ていた
今まで近しい人たちが亡くなったときは
悲しくて泣き明かしたものだが
自分が死ぬ時はこんなにも呆気なく
飄々と逝ってしまうとは…
この日から
私は少し
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