その都市/非在の虹
、
その都市の不可知性は徹底しており、
何の記録もない。
しかしどんな戦いが繰り広げられたのかは
若干の口伝えに伝えられた物語はある。
戦争が終わったのち
都市を訪れた者は息を呑んだという。
都市の外観には何の変化もなかったのだ。
砲弾に崩れた壁は一か所もない。
だけれども内壁は焼けただれ、すべては破壊され尽くしている。
建築の内部構造は一切の痕跡をとどめていないのだ。
つまり、巨大な空虚を包み込んだ都市が、
太陽の陽を受けて光り輝く外面だけの
蝉の抜け殻のごとき都市が、
永遠の美しさを偽って存在している。
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その都市には生の共鳴は
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