3月の終わりに/秋葉竹
公園のベンチで寝ている女を
小学校三年生の女の子は汚いと言う
ずっとそう教えられて来たから
口をとんがらせて泣きそうになって
汚い汚いとかん高い気分が滅入る大声で叫ぶ
春の陽気でも風はまだ冷たく
白い花が青い空に散りばめられている
女はただ雲になりたい
うつむいてそれを聞いていた
三年生の女の子は泣きながら帰って行った
黄色い電車が公園のすぐ横を通る
小さな噴水には小さな虹が架かる
胸をえぐり取られた女は
リードを伸ばし切った雑種に吠えたてられる
心配で迎えに来た彼に
乾いた音を響かせ平手打ちをあびせる
吹いている風は止まった
風を止める能力が反転し
止まった風が再び吹き始めたとき
止まった時間が動き出す
だから嫌なんだと彼は笑った
だから嫌なのよと
公園のベンチで彼女は笑った
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