ある面影の臨終に際して/Sisi
 

あまりに愛おしすぎたのだ


この瞬間とは、
過ぎ去ろうとしているかつての私達なのだろう
遠ざかる記憶の種が芽吹かせた
かろうじて届くほどの優しい両手なのだろう

何もかもが愛おしすぎたのだ

そうでなければ、
いよいよ解けてしまいそうなその両手に
どうして別れの言葉など、
手向けることがあるだろうか


いま、私は
肩越しの風にもう呼ばれることもなく
西へ、西へと沈んでゆく


時よ止まれ、あなたは美しい。




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