ある面影の臨終に際して/
Sisi
あまりに愛おしすぎたのだ
この瞬間とは、
過ぎ去ろうとしているかつての私達なのだろう
遠ざかる記憶の種が芽吹かせた
かろうじて届くほどの優しい両手なのだろう
何もかもが愛おしすぎたのだ
そうでなければ、
いよいよ解けてしまいそうなその両手に
どうして別れの言葉など、
手向けることがあるだろうか
いま、私は
肩越しの風にもう呼ばれることもなく
西へ、西へと沈んでゆく
時よ止まれ、あなたは美しい。
戻る
編
削
Point
(1)