生き続けろ、ひとつの言葉がひとつのことだけを語っているわけじゃない/ホロウ・シカエルボク
駱駝の玩具の背に本物のナイフ、飾り柄にいつかの血の記憶、縁の欠けたマグカップの中にはつがいの蝿の死体、それはあまりにも語れない、形を残す時間が短過ぎて…手を取って、ここから離れてゆくすべてのもののために、愚直な祈りとあまりにも乱雑な純粋、あらゆる信仰が指し示す先はどこともつかない方向ばかりで―手を洗っている間にいくつものことが思い出されては消えて行く、遠い昔に死んだ級友の記憶みたいに、排水口に俺の死んだ皮膚が引っかかっている…切れかけた蛍光灯は地下室を連想させる、昨日止んだ雨のにおい―御伽噺のようなものだったことがそう遠くない未来として考えられる瞬間に、腕時計の文字盤が意味を成さなくなるわ
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