内ポケット/ふじりゅう
中途半端な道 ここは
吊革の音すら響く 人跡未踏の車中
一角うって
はらって うって 伸ばして その
掠れ具合までに 閉じ込めた
狂気の手紙が今は己の
たったひとつの シャボン玉
空気中に生き着くウィルスを掻き分け
曲がったネクタイで ひとしきり
ごめんなさい 雨水を啜って
ひと齧りして捨てるパンみたいな辞表を
内ポケに捻じ隠したままの営業まわりは
ヤニクラの勢いでぶっ倒れ
ゴキブリのように這う布団虫と同じだ
誰にか分からないけど 電話をかけようか
何処に自分が居るか、もう分かってないのだから
まだ赤いビー玉の跡が転がっている
血眼の色滲むATMの中の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)