ありえない、くそったれの夜にも/秋葉竹
 

誰の声も優しくしてくれているんだと気づいた

その言葉に勇気づけられたし
それでも真っ直ぐな、
心破れた哀しみを歌ったし
これでもう、そういうふうに、
悪びれずに、悩まずに
眠るね?

そしてこの、底のない暗闇の部屋で眠るのだ。
仔猫の、震えるヒゲほどに、小さな寝息を立てて。

そういう風に
すべての人を誤解し、
誤解され、
あまねく世界のことを
そういうものとして
感じられるのだ。


だからそこからはじまる
スイートで
キュートで
ハニーな
総じて享楽的な
白い手袋の手まねきを
艶めかしいと思ってしまったのだ。


と思って
新しい正義を作りあげて
心眠らせベットに眠らせ
これでもう、そういうふうに、

悲しみを感じたのは

人生のこの忌々しい風が強くなったせいなのだと
真っ正面からの、嘘の笑顔が見られたせいなのだと


感じたのだ、悲しみを。



この、ありえない、くそったれの街にも
こころまで、空っぽの、優しさの風がふくんだろう。






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