苦虫君/服部 剛
 
私の中にいる一匹の苦虫君
コイツがなかなかやっかいだ

うずを巻く感情は
日々の暦を捲(めく)るうちに
凪いだものの
誰かのたった一言で
むくれた顔の苦虫君が
いつのまにやら居座っている

この感情を、追い出すべからず
せめて私という人を
そっと両手の温もりで、包んでみよう

すると 馬鹿らしくなったのか
苦虫君は
闇に姿を消していた

――苦虫君のまぼろしよ さらば  




 
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