最終電車/石村
 
 あかるい駅前通りを
まつすぐあるいて海岸へ

そこから駱駝に乗つて 砂丘を越えて
また砂丘を越えて もひとつ砂丘を越えて
エメラルドブルーの水辺へ

黄色い櫂のついた
薄桃色のボートに乗り込んで
水平線へ

空と海とが出合ふさかひ目で
姉さんから借りてきた
銀のかんざしをこの星にさす
乙女のためいきのやうな音がして
四囲をかこむ青い風船はたちまち小さくなり
わたしは引力をはなれる

ほら
ミルキー・ウエイ
マントを羽織つた少年が 玉乗りしながら
私に目をやり につこり笑つて
「よくきたね」

ありがたう しかしわたしは先をいそぐのだ
おぢいさんに
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