かなしみ/やまうちあつし
私の庭にかなしみが咲きました
淡い色したムラサキの花です
隣人たちは噂をします
「咲くときには咲くものだ」
その花を抜いてしまおうと
何度も試してみたけれど
かなしすぎて
抜くことができません
動物たちが集まって来ました
額を寄せて
その花を眺めています
私はそれを追い払いました
「見世物ではない」と
ある晩のことでした
いつものように
真夜中に目覚めて
カーテンを開けると
見知らぬどこかの神様が
しゃがんで花を見つめています
絵の具をこぼした闇の中
目だけが煌々と光っています
私は布団を頭からかぶって
マグニチュード9・0です
次の日の朝
動物たちは懲りずに
花の周りに集まってきました
私はそれをかきわけて
花の前に立ちつくします
そして如雨露で水をやります
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