厭世/ルラ
禍福の 二面を
病しつつ 希求する
衝動が 記憶の細部を
網膜へと 知悉させ
存命への 裂帛な哲学を
数瞬の内に 完成させる
内奥の 坩堝に
君臨する 生命
心臓という 白い腕
水脈から 赤いろを汲む
人格の 塑像が
捻転し 歪曲する
絶望が 無意識から
意識へと 墜ちる震撼
凍える 霊肉の境界を
経験の 意匠と
夭逝への 未練とで
死に神が 錬成した
過分なく 生き
そつなく 死すという
本能を 欲求が
血管に 放流する
生と死を 反芻し
奇妙な養分を 摂り
異国の歌を 愛で
暗い門を 潜る
朧な 霧の墓標には
孤独な 夜の詩人の名
繰り返し 読んでいる
己にも 死があるのを
己の 罅割れた骨壺を抱き
焼いた詩を 捨てる
壺の口が 紫煙を燻らす
おれはその ため息をみる
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