コーヒーの詩学/葉leaf
 
 コーヒーの暗褐色の液体は、私にとってすべての倫理的な源泉である。朝、まだ日が昇らない刻限にお湯を沸かし豆を挽いてコーヒーをドリップする。マグカップに注がれたコーヒーは私の生きる意志をそのまま凝縮している。コーヒーを飲む行為は存在を確かめる行為であり、意志を注入する行為である。私は毎朝コーヒーを飲むことによって、自らの存在を確かめると同時に生きる意志を再確認する。
 コーヒーは善悪を決定する液体である。あるいは美醜を決定するといってもいい。私にとって善い生き方とは美しい生き方であり、美しい生き方とは善い生き方である。コーヒーは通俗的な悪を善に転換する特殊な液体である。例えばコーヒーは殺意の液体で
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