聖堂/ホロウ・シカエルボク
あ―もしも過去が本当にはないものなら、寿命までの長い時間人はなにを飲み込んで生きていけばいい?俺には歳を取ったふりなんか出来ない、自分の知っていることしか知らない、ただ当り前に生きて、時を積み重ねてきた、そんなことを誇りに思うことなど出来ない、それなら油虫だって王様を気取ることが出来る―そうは思わないか?問題は、実感というやつなんだ…官能的に自分を打ちのめしてきた、リアルな感触、いまだってそのことを思えば、血液がさっと沸点に達するような…そんなものばかり求めて生きてきた、いくつかのものはもう蘇ることはないけれど、残りのいくつかはまだ俺に体温を思い出させてくれる、でもいまは―回路が断線している、どこ
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