節分/為平 澪
してな、【お父ちゃんは七万円儲けた
から、明日も勝負賭けに行く!】ゆうて、出ていった、ゆうとけよ…。」
泣きじゃくる子供のような声を抑えながら
冷たい手からもらったのは 温かい幕の内弁当、二つ
それっきり 父は家に帰ることはなかった
鬼は 母だったかもしれない
鬼は 私だったかもしれない
父がコンビニ弁当でなく 福豆を買って帰ってきていたなら
ちゃんと家の鬼を退治して
自分の家で長生きできたかもしれない
父を見送って四年
季節の節目ごとに雨は降り
寒い日は節々が痛むと 鬼は哭く
毎年変わる当てもない恵方を目指しながら
幸せになりたい、健康になりたいと 鬼のく
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