秘法(第一巻)ほか九篇/石村
 
吹かれて
 立てる音みたやうなものだ

 俺よ
 おまへはつくづく駄目なやつだ

 駄目なやつだから
 とつとと命を仕舞ふ
 支度でもするさ……

星あかり
しづかに

おろかなる
男ひとり
影を置く

月は凍つてゐて
ものみな息を凝らし
時の刻みに
耳傾ける

冬だ
支度をするがいい


(二〇一八年十二月三十日)




  罪


いいんだ
花は
さかなくてもいいんだ

いいんだ
麥の穂は
みのらなくてもいいんだ

いいんだ
うたは
うたはれなくても

笛は
ふかれなくても

絵は
えがかれなくても

木は
彫られなくても

なみだは
こぼれなくても

空をふるはせ
ひびくものらよ

どうして
うまれてくるのか
その罪に
をののきながら


(二〇一八年一月二日)





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