マッチは売らない少女/こたきひろし
に立っていたのは
マッチは売らない少女だった
彼女が買って欲しいのはその真心だった
通りすがりの男に近づいては声をかけた。
「お金と引き換えに貴方にお譲りします。私の持っている若さとわずかな時間を。そして誠心誠意をおまけにつけて」
その言葉に男たちは一様に立ち止まると、少女の顔を覗きこんでからその肢体に目をやった
わるくない
男らは思い「いくら」と聞いてくる
少女は手の指を使って売値を示した
マッチは売らない少女が
新聞の片隅の記事に載った時、その名前にはアルファベットの文字がつけられていた
少女の生い立ちと育った環境は
彼女が不幸を生まれもって来たことを証明していたかも
しれない
彼女の場合
不幸は始まったのではなくて生まれる前から引きずってきたに
違いなかった
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