お父さん/ミナト 螢
ネクタイの結び方を知らずに
目の前にあるお手本を避けた
慣れた手付きとヨレたイニシャルで
社会という橋に虹を架けて
はみ出さないように生きていくこと
不器用なトレンチコートの紐が
誰かの傘に引っかかる朝も
頭を下げて電車に乗り込む
僕はあなたが何に汗を流し
どんな夢を拾い笑ってきたのか
同じテーブルを囲んだとしても
サイコロ一回振る当てもなく
ハンバーグの焼ける音が弾けた
クリームソーダを
ラストオーダーにして
口の周りを白く汚したら
ナプキンで拭き取る前に急いで
飛行機に乗って戻りたくなる
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