森林公園/羽根
 
オ」はドッグフードには目もくれず
車椅子の女性に纏わり続けていた
夕方になりそろそろ帰る準備をした
車椅子を出し「レオ」に紐を付けようとしたら
白い毛から小さな虫が飛んで来た

家に何とか着いて車椅子に細い女性を
載せようとしたら女性には足はなく
「レオ」はただ紐のみだけだった
その夜夢か現実か分からない微睡の中
「レオ」から飛んで来た
小さいとんぼのような昆虫が
私の胸に止まっていた
それは美しい蜉蝣だった

体は弱く細長で
寿命は数時間から一週間ぐらいで
産卵したら消えしまう儚い命
その時ベッドのサイドボードの上にある
三人と一匹の写真が急に明るく輝き
二才の息子が夜鳴きを始めた

私は二人きりである我が子をそっと抱き寄せ
写真を見ながら
泣き止むまでいつまでも
優しく揺らし続けていた
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