可不可/やまうちあつし
幽霊の朝だ
右手をあげて
おはようのあいさつを
それは別れの
あいさつを兼ねている
かなしみが鳥のように
肩にとまっているから
身体は右に傾いている
よろこびが鼠のように
先を跳ねてまわるから
足取りはおぼつかない
地球の上に着地するには
長靴が必要である
なぜなら地球は泥濘んでいる
あらゆる者の諸事情で
びちょびちょだ
だから言葉は
飛び立ってはならない
それらを乗せてやれないのなら
野球選手のふりをする
あるいは休日に
車を洗いにでかける
昔なじみの神様は
今頃何処かで
透明な羽を生やしているか
赤ん坊に戻っ
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