ただ赤く塗り潰して/ホロウ・シカエルボク
こえる嘲笑は必ず手前の心臓のなかからさ、ごらん、こんなに傷だらけだ、ごらん、こんなに血塗れだ、ごらん、こんなに陰鬱とした景色だ、ごらん、忘れられた水槽のようにいたたまれない、かつて生きていたものが砂のなかで形を無くしている、そんなもののいっさいをそら、ここに晒すことでもう一度生きようとしてきた、それは誰の為のものではなく、或いは自分の為ですらないかもしれない、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、理由をつけることは重要事項ではない、それは簡単な地図に余計な情報を書き入れるようなものだ、静かに置かれたものは音を立てないままそこに在り続ける、投げつけられたものはそれが脆いものであろうとなかろうとなんらかの変化を負う
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