クリスマスイブ/マチネ
 

幸い、彼女の真っ青な目は私達一人ひとりのことなんて見つけてはいなかったから

そのまま、私達は思うがまま買い物をした
祝祭の前夜にふさわしく
そして、柔らかく焼いた仔牛の肉を食べた
血の今にも滴るような

帰り際、同じ道を引き返すと彼女はちょうど交代時間だった
短く刈り込んだ髪の男の白人に
宣教道具一式を引き渡すと
できるだけひと気のない道を選んで去っていった

彼女から引き継がれ掲げつづけられるスピーカーには
人々の罪はキリストの血によって贖われたという殴り書きが
相変わらず優しい日本語とともに震えている

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