有想枕/ふじりゅう
 
僕は
 何も出ない器を 逆さにして捨てる。
 埃だらけの手紙を、もう捨ててしまう。
 ライターもチャッカマンも、使えないけれど。

月灯りを見る。想う。

 …最初の火の粉が
 …細い花びらに封じられていた
 …お父さんのたばこ用の火を
 …こっそり点けた 始まりの匂い

 暁に溶かされかけながら
 細い糸をゆたり ゆたり引きずる 何時か頃
 狼の様に仕事疲れだけ背負っているだろう。
 おもむろに
 ノートを開けたら
 見守られながら綴った内臓が居て
 僕は はにかみながら それも破いて捨てる。

 ひび割れた写真たても記憶ごと千切る。
 夢と汗の物語を
[次のページ]
戻る   Point(0)