川の底を覗き込む/こたきひろし
川は切り立った山肌に沿って流れていた。
夏になると近隣の子供らが集まって水遊びした。炎天の空の下。子供らの歓声が山あいにこだまする。
山肌から突き出た岩の周りはかなり深くて、自然とその辺りが子供らの遊び場になっていた。
小学校の高学年から低学年ばかりの男女。大人は誰も付いていなかった。
危険な川遊びだがそれを止める保護者はいない時代だった。
子供らは水着なんて誰も持っていない。男の子も女の子もパンツ一枚。そんな時代だった。
周辺は辺鄙な土地で粗末な農家の佇まいが点在していた。それぞれの家々は現金の収入が乏しくほとんどが自給自足の生活をしていた。
なのに子沢山の家が多かったのは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)