およそ一千年前の一夜に/こたきひろし
 
彼はまさしく童貞でした

彼は緊張して
そのか弱い心臓がガタガタと震えました
そのせいか
結果はNG でした
それって童貞を卒業した事にはならないだろうか
単純に
なけなしの金を溝に捨てたのといっしょだったのか

女の人は最初優しく接してくれたが
その内に苛立ってあからさまに感情を態度に表わした

そしてひとこと言った言葉はじゅうぶんに彼のやわらかい心を傷つけた
容赦の感じられない言葉だった
「だから童貞は嫌なのよ、めんどうくさいから」

およそ一千年前の一夜に
彼の心は著しく打ちのめされて
自分はいったいここへ何をしに来たのかわからなくなってしまい
情けなくも悲しくも
惨めな思いだけを冷たい釘のように打ち込まれた

およそ一千年前の一夜に
およそ一千年前の一夜に




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