紫のカリフラワー/藤鈴呼
 


薔薇を手向けるのが好きだった
貴方の代わりに
一輪挿しを生めるなら

目の前で儚げに咲くラベンダーよりも
ふわふわの雲をヒトサシ

唇が切れぬ程の柔らかさでもって
棘など まるで 知らなかったかのような 角度で

微笑んであげる
手を伸ばしてあげる

両手を空に向けて
唇を仰いだ団扇から外したら
顎が外れるくらいに 笑えるかしら

粒揃いの光たちが行き過ぎる
何かを引き摺る音

夕暮れのトキメキから解き放された朱鷺が
頬まで朱く染めるならば こんな瞬間

真っ青な蒼も空も海も忘れて
真っ赤な唇だけを求めて泳ぐのね

ふよふよと頼りなさげな
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